URBAN DESIGN 365 : 5月 2013

2013/05/28

世界中の都市で走る標準形低床トラム!広島トラム5000形グリーンムーバーと芝生軌道

トラムは都市にとって水平移動エレベーターと言えるとても良い要素で、ドイツやオランダをはじめ欧州の各都市では無くてはならない存在となっています。トラム網が衰退した都市でも、その有用性が再認識され路線延長や新規路線の建設も多く行われています。

都市のインフラとしてトラムを推進する都市では、シンプルで機能的なデザインの車両、停留所、芝生軌道などが整備され、巧みな運賃システム、優先信号機を多様するなど、総合的なトラムシステムへの改良が積極的に行われていて、ますます利用しやすくなっています。

宮島方面へ向けて発車するコンビーノ5000形グリーンムーバー。グリーンを基調としたコンビーノが周囲の木々と共に、都市のクリーンな公共交通を感じさせてくれる。世界の低床トラム車体デザインの中でもトップクラスのデザインのひとつだと言えると思います。1999~2002年に導入された車両ですが、時を経てもなお最新車両としての存在感は変わらない。

広島トラムを運営する広島電鉄では、ドイツやオランダのトラムシステムには及ばないものの、日本の中ではとても積極的に改良が進められているトラムのひとつで、平和記念公園、原爆ドーム付近への芝生軌道の導入もそのひとつです。

グリーンのフレームと大きなガラス、世界標準の車両と芝生の軌道が日本に新しいトラムシステムの到来を予感させてくれる。シンプルな電停空間ですが、ドイツやオランダと比較するともう少し簡素な上屋でもいいと感じてしまいます。

広島港から海岸通付近の軌道も延伸改良や芝生化が行われています。また、大きいのもでは西広島や横川付近の改良も行われその場所での利便性は向上しています。

今後も停留所の改良、芝生軌道や連接低床車を増やす計画があるそうですから、とてもたのしみなところですが、日本の場合上下分離方式が完全ではなく、民営化とは少し違う、私鉄が多い日本ならではの問題点から整備の速度は非常に遅いと言わざるを得ません。

そのため、特に車両面では新型車両を一度にまとめて導入できないため、車両の種類や色が増えすぎてコストが上がり、利用者から見ると分かりにくくなってしまう傾向があります。電車ファンにとってはいろいろな車両を見られてとてもたのしいという反面、普段利用しない人、特に観光客にとっては車両のデザインが違うことによって車内の段差、座席の位置、路線や行き先が難解になってしまうなどの問題が発生してしまい、ドイツやオランダと比較するとあまり好ましくありません。

本来はドイツシーメンス社製コンビーノ5000形グリーンムーバー5車体連接車の編成数をもう少し増やし、せめて2号線の車種統一などが出来ればなお良かったとは思います。

このようなシンプルな車両はまさに新しいトラムシステムと言うのにふさわしくうれしいのですが、日本の他都市を見ても、ドイツやオランダのように運行車両の多数を占めるまでには、気の遠くなる時間がかかりそうです。

シーメンス社コンビーノ5000形グリーンムーバーどうしのすれ違い風景。次々と車窓に見える、ひとつひとつの電停空間に少々コストをかけすぎた感じは否めませんが、ドイツやオランダのトラムシステムを思わせる都市空間。コックピットのボタン類はシンプルにまとめられ、モダンな空間は後継の5100形、1000形にも引き継がれている。
元京都市電の1900形がやってきました。歴史的な旧型車両から最新式の低床車両まで、様々な年代の車両が次々とやってくる広島トラムは見ているだけでもとてもたのしい。

ドイツからやってきたコンビーノ5000形グリーンムーバー5車体連接車の後登場した、日本製の5100形グリーンムーバーマックス5車体連接車、2013年から運行開始した、広島トラムのラインカラーとも言えるグリーンではない1000型と共に今日も芝生軌道を快走していることでしょう。広島に行った際はぜひヨーロッパデザインの5000形グリーンムーバーも体感してみることをおすすめします。

2013/05/10

有機的な制御で待ち時間が少ない!オランダの方向別に設置されている信号機

オランダやドイツの多くの都市では、交差点にそれぞれ方向別のレーンが設置されていることがほとんどで、信号機もレーンの機能を最大限発揮できるように方向別に設置されています。

また、信号機は自動車用と歩行者用だけではなくトラム、バスレーンや自転車レーン専用の信号機もそれぞれ方向別に設置されています。

写真はアムステルダムのフォンデル公園正門前の自転車レーンです、自転車レーンにはスタドハウダースカーデを直進する左側の信号機、ミュージアム広場方面に向かう右側の信号機の2台の自転車用信号機があります。

交差点では自転車レーンも直進と右折の分岐となっていて、バスと同じミュージアム広場方面自転車レーンへの自転車用信号機は青になっています。写真は直進する自転車が左側の赤信号待ちをしているところ。

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この交差点は多くのトラム、バスや自家用車が交差するとても交通量の多い交差点で、公園利用者などの歩行者や自転車も多いのですが、それぞれの方向に別々のレーンと信号機があることで比較的スムースな通行が保てれています。

特にオランダでは自転車レーンと歩道の空間も完全に分けられているので、歩道上で自転車が歩行者と交錯することもありません。

また、オランダやドイツでは、多くの信号機に歩行者と自転車用の押しボタンがあり、不必要な青信号はなるべく少なくなるようになっています。そのかわりボタンを押すと比較的すぐ青信号になる場合も多く、特にトラムやバスの信号待ち時間はとても少なくなるようになっています。

押しボタンやセンサーなどによって有機的に信号が変わり、交通状況にあった制御を行っている交差点がとても多く、公共交通や歩行者、自転車が利用しやすい環境が整備されています。


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交通量の多い道路を広げるには建物の建て替えも必要になります。立体交差や実用性に乏しい歩道橋などを作れば都市を維持コストが増大し、歴史的な都市景観にも影響を及ぼしてしまいます。都市の環境や持続可能性の観点からもあまり好ましいとは思えません。

オランダの信号設備や都市空間の使い方は実にコンパクト。限られた都市空間でもデザイン次第で都市はもっと良くなる可能性を秘めていると気づかされます。

日本では多くの都市で新しい道路建設や拡幅事業に関心が偏りがちです。立ち退きや立体交差では整備に時間がかかる上、後世の市民が負担する都市の維持費も増える一方です。

既存の都市空間を部分的に華美にし過ぎるだけではなく、持続的な公共空間とは何か再考してみる必要があると思います。

2013/05/01

乗るのも見るのもたのしい!アムステルダムのダム広場を次々に通るモダンなトラム

アムステルダムのダム広場とモダンなトラム車両の風景を紹介します。

ダム広場は1270年頃にアムステル川をせき止めるダムを設けて街を造りはじめたアムステルダムの歴史の中でも最も重要な場所のひとつで西側には王宮、その北側には新教会があります。アムステルダム旧市街の中心部に位置していて中央駅からはダムラック通りを歩いて約5分、トラムで約1分の場所にあります。

コンビーノの大きなガラスに写る旧市街の街並みと次々に通る低床トラム!車内から大きな窓越しにアムステルダムの街並みを見るのもとってもたのしい。

歴史的なダム広場にもトラムの路線が乗り入れています、ダム広場停留所を経由するトラム路線は全部で11路線でアムステルダム市営交通会社GVBが運行するドイツシーメンス社デザインの5車体連接コンビーノの車両が途切れることなく運行されています。

アムステルダム旧市街の景観にモダンなデザインの低床トラム車両がよく合います!

まるで車両がタイムスリップしてしまったかのような光景!ダム広場の王宮前にはトラムがひっきりなしに走っています、でも自家用車の乗り入れは制限されていているのでトラムに気をつければゆったりと散策することができます、旧市街に響く新しいトラム車両の電気モーター音がなんだか不思議な感じでこれまたたのしい!

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アムステルダムを訪れたらトラムを乗り継ぎながら移動して、中央駅からダム広場などの歴史的な旧市街地区、運河をいくつも越えて芝生軌道を走り郊外を訪れたり、トラムを利用していろいろな場所を訪れるのがすごくおすすめです!

ヨーロッパのトラムやバスは専用の走行空間や優先信号機が確保されていることがほとんどで、運行スピードも速く移動の定時性が確保されています。

特に低床のトラムは道路からそのまま乗車することができるなどの利便性や、地下鉄などと比べると建設時、運用時の設備も小さく環境や都市の維持費などのことを考えると、とっても持続可能性を感じさせてくれる新しい交通システムです。