URBAN DESIGN 365 : 2013

2013/10/31

歩行者と自転車そしてトラムも自由に走る!アムステルダムトラム10、26番線が交差するリートラント公園の都市デザイン

 アムステルダム中央駅からアイブルク地区へ向かうトラム26号線に揺られて約5分。ビッムハウスを左に見ながら軽快に走るトラム26番線は2つ目の停留所を出発すると程なくトンネルに入ります。1つ目のトンネルを抜けて車窓が明るくなるとリートラント公園内の停留所にすべりこみます。

 26番線はアムステルダム中央駅から東部港湾地区を通りアイブルク地区までを結ぶ比較的新しい路線で、中央駅付近を除いてそのほとんどが専用軌道になっています。26番線以外のトラム路線も十分に早いですが、他の路線と比べるとより高速運転が可能な路線となっています。

 リートラント公園停留所には他に環状路線のトラム10番線が乗り入れていて乗換えが簡単に出来るようにデザインされています。

 26番線のうち東部港湾地区とアイブルク地区の間は水面の下を通る地下トンネルになっています。26番線はリートラント公園を出るとすぐに水面下のトンネルに入るため地下1階、10号線は地上に乗り入れていて立体交差の乗り降り場になっています。


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 地上10番線は普通に公園と平面に行き来が可能で、26番線の乗り場へは階段、エスカレーターとエレベーター、あとは階段と芝生の斜面!によって最短距離で結ばれています。

 階段などの高低差のある部分以外に落下防止柵などの動線を遮るものはほとんど無く、トラム停留所空間も公園の自由な空間がつながった空間が広がっています。そのため2路線各乗り降り場間の移動はゆっくり歩いても1分以内で出来ます。

地下の26番線は専用軌道で高速運転区間のため通常のトラム停留所よりは鉄道のホームのようなデザインになっています。でも、とっても広い芝生の斜面に囲まれた都市空間で窮屈な感じは全く無いです。地上から芝生の斜面をすべってトラムに乗り込むことも出来ます!
26番線のホームは公園とトンネルをくりぬいたようなとってもおもしろい空間になっています。とっても開放的で隣り合う10番線ホーム、リートラント公園などのそれぞれの都市空間が心地良く、無理なくつながり、喚起設備や日中は照明設備が無くても自然の風と光が吹き向けとても気持ちの良い都市空間となっています。
地上10番線の乗り降り場の様子。公園の緑地と一体化した芝生軌道が東部港湾地区方面に続いています。公園内も街中同様にトラムの接近を知らせる信号機のみが設置されています。遮断機や横断防止柵などは無く、歩行者、自転車やトラムが公園内を自由に行き来する姿は、この都市の都市デザインの豊かさをものすごく感じさせてくれます。心地よい!

 10、26番線は全ての車両がドイツシーメンス社製のコンビーノ5車体連接車で運行されているので車内も含めて全て段差無くトラムの利用が可能です。 

 地下のホームから望む芝生とガラス、そして風向きや空の表情によって変わる多様な停留所の佇まい。日常のほんのつかの間にこんな空間があるなんて、こんな素敵な都市空間の利用者になりたい!と思いながらコンビーノに乗ってリートラント公園を出発しました。


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2013/08/08

水辺のベーカリーカフェbreadworksでゆったり過ごす!東京天王洲運河の都市デザイン

東京の運河沿いの都市空間の中で、とっても居ごこちの良いこの木製デッキ空間へは、りんかい線、東京モノレール線の天王洲アイル駅から歩いて約5分、品川駅からもちょっと遠いですが駅東側の運河沿いをゆっくり歩いて約30分ほどで行くことができます。

天王洲島の北側に接する天王洲運河沿いに到着すると、そこにはとても広い木製の歩行空間が整備されていてとってもゆったりと過ごすことができます。

夏の夕暮れに水辺のデッキを歩いたり、たたずんだりするにはとっても良いデッキです。デッキの木製床が平面のまま運河に伸びていて、柵は細い金属製のバータイプのみ!実にシンプルですが、これがまた奥に見えるトラス橋と共にこの運河沿いの都市景観を引き締めている。屋形船が出航していくシーンがまたたのしい。

何だかここに居ると、ドイツやオランダに居るような感覚が!きっとそれは時代を超えて使われてきたトラス橋、倉庫群が取り壊されることなく再利用されていて、運河沿いの新しい空間も舗装材、落下防止柵などに単一の素材が使われていることがとても大きいと思います。

しかも、この一帯の都市空間が実に最低限の部材のみで構成されているので、都市の維持コスト的にも無駄が少ないと感じられる、日本ではあまり感じることのできないとっても良い都市空間になっています。

やはり税金で維持されるのですから最低限と感じられる都市構成が、自然と市民に良いと感じさせてくれるのだと思います。

でも、日本の惜しいところがひとつ。それは、このような都市デザインが限られた狭い範囲のみで終わってしまっているところ。

東京の運河空間に限ったことではありませんが、日本でももっと民官の境を無くして柔軟に都市空間の魅力を活かしていけば、もっと魅力的な都市にできるのに!と思える場所はたくさんありそうな気がします。

運河沿いの倉庫を再利用した建物にはレストランT.Y.HARBOR、WATERLINE、ベーカリーカフェbreadworksがあります。東京の運河沿いでこれだけの規模で環境が整備されていることは他にあまりありません。民地と公有地の政策が合えば東京にもこのような質の高い都市空間ができるのだと思います。東京の都市としての可能性はまだまだ引き出せば本当にたくさんあると感じずには居られません。
倉庫前の木製デッキ上にはテラス席もあり、水の都東京を体中で感じることができます。他に水に浮かぶ客席や桟橋も整備されていて、多様な東京運河をたのしむことができます。

夏の暑い日、運河を流れる涼しい風で冷たい飲み物なんて最高ですね!でも、最近の暑さではどうなんでしょう...


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2013/08/06

名実共に田園林間都市!ミュンヘンペルラッハのノイビーベルガー通りと自転車レーン

ミュンヘン中央駅からS7番線に乗車、都心の地下区間を出てさらにミュンヘン東駅を出発すると、時折田園地域を挟みながら滑らかに走るSバーン423形車両、車窓を約20分たのしむとあっという間にミュンヘンペルラッハ駅に到着します。

歴史的な駅舎は今も利用されていて、横にバス停、パークアンドライド駐車場、自転車置き場が平面で整備されています、デッキ、横断防止柵や横断歩道さえない駅前空間は、実に最低限の都市デザインのみで構成されています。


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駅北側に接するノイビーベルガー通りは、とっても緑あふれる住宅街の中を南北に通っています。

車道、車停車帯とは別に歩道の車道寄りに自転車の走行レーンがデザインされています、横に接する路地があっても歩道と自転車レーンは段差などなく平坦に整備されていて快適に歩いたり自転車を運転することができます。

路地が接する部分も歩道と自転車道が途切れることはありません。クルマのドライバーも横の路地に入るときは歩道と同じ舗装仕上げになっている空間に入るので、どちらかというと歩道にクルマがお邪魔するという感じになります。ドイツやオランダでは標準都市デザインですが、日本では採用されない都市デザインです。

通過できない住宅街道路をデザインするのに加えて、無料の環状道路や幹線道路が最適に整備されているドイツやオランダの多くの都市では、住宅街の路地は住民以外はほとんど利用しません。そのため多くの都市で静粛で快適な都市環境が保たれています。

一見幅員の広いノイビーベルガー通りも自動車の通過交通はほとんどなく、とても静かな住宅地のこもれびの中をゆったりと歩くことができました。

本当に緑あふれる住宅街、車道や歩道とは別に平坦な自転車の走行レーンがあります。サインや道路標示はあまり無くても街路デザイン次第で市民はこの空間を自然と読み取り利用できるのだと思います。このようにいい意味で簡素、質素で最高の性能を発揮する都市デザインがドイツやオランダにはたくさんあります。

いつもドイツやオランダのちょっと郊外を訪れると、ここは名実共に林間都市だと自然に感じていることに気が付きます。そして、ただただ住んでみたくなります。

訪れると中心市街地から鉄道でたった20分移動しただけでこのような田園、林間都市を感じることができるドイツやオランダの都市デザイン政策の素晴らしさを感じることができます。


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2013/07/30

オランダやドイツでは標準都市デザイン!アムステルダムのラウンドアバウト交差点

アムステルダム西部、オスドルプ地区のオークメール通り、バーデン・ポウェル通りが交差するラウンドアバウトです。

ここのラウンドアバウトもオランダではおなじみの自動車レーンと自転車レーン用にそれぞれのラウンドアバウト内環状レーンがあります。


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ラウンドアバウトは日本には無い譲れの交通規制によって運用される交差点です、一般的に信号機の設置や運用コスト、無駄な信号待ちによる時間のロス、アイドリングを無くすことができることから世界の多くの都市で採用されています。

アムステルダムでもたくさんのラウンドアバウト交差点が整備されています。また、ラウンドアバウト以外の交差点でも一時停止ではなく譲れの交通標識をたくさん見かけることができます。

アムステルダム標準のラウンドアバウトデザインなのですが、良く見ると交通標識と案内標識が一本のポールに付いています。一見普通に見えますが。日本では様々な何とか?!で、多分多くの場合ポールを別々の予算で2本立てると思います。

ラウンドアバウト手前に設置されている標識、アムステルダムの自転車案内サインと譲れの交通標識が1本のポールに設置されています。日本だと管轄がどうとかで無駄に2本のポールが立ちそうです。奥はクルマ用、手前は自転車用の環状レーン、つまり2重のラウンドアバウトです。

オランダやドイツではほとんど全ての空間でそう感じるのですが、このようなシンプル都市デザイン空間は日本ではあまり感じることができないと思います。合理的というか、都市の建設、維持費などなど考えるとやっぱり1本の方が良いと感じます。

無駄な標識や路面表示も無く洗練された都市空間、一見クルマのレーンは狭いですが緑地帯、歩道や自転車レーンまで含めた道路幅員はとても広い。もしも日本でこの幅員の道路なら多くの場合、片側クルマ2、3車線で、そのうち1車線はきちんと停車帯が無いために発生する停車車両で通行できない、自転車レーンは無い、という都市空間となってしまうでしょう・・・

日本でも一部の地域では、自転車レーンやラウンドアバウトが整備されつつありますが、まだまだその都市の部分的な整備で、すごく狭い地域内にとどまっているのが状態ですかね。日本でも整備が進むと良いと思います。

きっと今日もアムステルダムのこの交差点では、自転車やクルマがスムースに走っていることでしょう!


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2013/07/16

自転車やトラムが都市の主役!オランダのLEDカウントダウン表示付き自転車用信号機

自転車専用レーンが街を有機的に結んでいるオランダ。自転車用のレーンがあるだけではなく交差点には自転車用の信号機も整備されています。

黄色の部分にLEDタイマーが!とっても実用的です。自転車のマークが光る信号機は日本には無いですが、コストをかけて自転車用などと補助標識を付けるよりも感覚的に認識できてとっても良いデザイン。

オランダで自転車レーンを走っていると交差点では必ず自転車マークの信号機が目に入ります!トラム、バス、自転車、歩行者、クルマはそれぞれ別々に制御されていてお互いに交錯することがありません。

それだけを見ると信号待ちが長そうな感じもしますが、これが意外とこまめに変わるため短い。多くの歩行者、自転車用には信号の色を知らせるトコトコ音の付いた押しボタンがあり、トラムやバス用は通りかかったときのみ信号が進めになります。

そのため、意外と待ち時間は短く、不要な信号待ちが少ないように制御されています。イメージでは常時クルマ用の信号が進め、自転車や歩行者、トラムやバスが来たときはセンサーや押しボタンで比較的すぐ進めになります。特にトラム、バスレーンの場合は多くの場合、赤信号で止まる前に進めの信号に変わります。

都心部では歩行者や自転車、トラムやバスが多いためクルマの進め信号はとっても短くなる傾向があり、クルマだと赤信号待ちの時間が多めになります。そのせいか、市民は自然と赤信号の多くなる時間帯に、や荷物が少ないときなど、クルマが必要ないときはトラムや自転車で行こう!となるのだと思います。

このことがトラムやバス、自転車の移動手段としての存在感を抜群に高めています。このような都市政策によってオランダではとてもトラムや自転車を乗り回したい気分になります。

公共交通を利用したりレンタル自転車を借りて街を有機的に移動する方がとても気持ちよく、時間とお金の節約、環境保護にもなる都市デザイン!素敵です。

ポールの下の方にはかわいい小さな信号機が付いています。オランダやドイツでは自転車用信号機が交差点の手前に設置されるのが標準なので、先頭で信号待ちをするときにとっても見やすく、まるで自分専用信号機のような楽しさがあります。

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2013/07/13

すごくたのしい!東京都心で自然に流れる時間を感じる代々木公園の芝生と水辺の空間

東京都心にあるとても大きな緑地、いくつかありますが今回は代々木公園の北側地区中央にある芝生と水辺の空間です。

新宿、表参道、渋谷など大きな駅に囲まれた代々木公園は、隣接する明治神宮の森と共に東京都心の広大な緑地空間として広く開放されています。

東京23区では4番目に広い代々木公園、その北地区のほとんどが森や原っぱとして開放されていて多くの市民の憩いの場となっています。

代々木公園の水辺空間からは森の向こうに新宿方面の高いビルが見えます、まるで海外のような景観!とても広いスケールで東京の都市を感じられてとても気持ちが良く、地球の、世界の中の東京を思う存分満喫することができます。

代々木公園北地区の水辺空間では多くの人々が思い思いの時間を過ごしています。芝生に横になる人、読書をする人、ヨガをする人などなど、とても気持ちのいい広大な緑地が人々を包んでいます。

構造物に囲まれた東京都心の中で日々忙しく過ごす市民、都市生活者にとって近くで感じる余暇の自然な時の流れ、オランダやドイツと比べると都市の緑地が途切れがちな東京で、今日も市民生活の質を整えてくれています。

気持ちの良い木漏れ日の向こうには、芝生の上で日光浴をたのしむ人々。一見ただの何もないつまらない空間と思い、良い意味でも悪い意味でも、造作し過ぎがちな日本人でも、さすがにこの空間の豊かさは今のところ壊したりはしないので本当に良かったと思う。ぜひこのままの都市デザインで後世に引き継いでいきたいと思うひとりです。

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2013/06/22

東京でオランダデザイン!空間がたのしくつながるMVRDV設計の表参道GYRE

東京表参道とキャットストリートの交わるところに、ひときわ素敵な建物GYREがあります。

GYREは竹中工務店が事業主として商業施設を開発したプロジェクトで、敷地に面する表参道の欅並木の街並みを生かしつつも話題性のある空間を生み出すために設計コンペが実施されました。

選考の結果、「回転させる」をコンセプトにして建物に多様な空間を生み出し、表参道の欅並木を存分にたのしむことのできる建築を提案したMVRDVの案が採用されました。

GYREの多様な表情に、表参道の欅と雲の多い空が、呼吸を合わせたかのように気持ちよくたたずむ。
建物の外周には回転によって生まれたずれに合わせて外部空間が有機的に現れていて、レストランのテラス席や外部階段として利用され開放されています。
表のずれから外周を回りつながるGYRE裏側の外部階段空間。外部空間の手すりはガラス製で建物の外とのつながりもたのしい。
GYREの外空間からパノラマで渋谷駅方向を眺めることができる。景観の良し悪しは置いといて、キャットストリート越しに視界の抜ける光景は迫力がある。

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GYREは張り出し部分の外部が利用ができる点で異なりますが、どことなく同じMVRDV設計のアムステルダム高齢者向け集合住宅WOZOCOの飛び出しデザインと同じたのしさを感じる建物です。GYREは近くに行ったらぜひ感じたい東京の素敵な都市空間です。

GYREについてもっと詳しく!竹中工務店GYREのページ

2013/06/16

ホームの屋根が消えた?!世界遺産の街レーゲンスブルグ中央駅の見事な景観空間

レーゲンスブルクはドイツバイエルン州に位置し、市の中心部に当たる旧市街と、ドナウ川をはさんだ対岸の地区がユネスコの世界遺産に登録されている都市で、ドナウ川とレーゲン川の合流地点に位置しています。レゲーンスブルク中央駅は旧市街の南側に位置しています。

線路空間を跨ぐ通路の側壁はほとんど全てがガラスで作られていて、鉄道空間越しに街を見渡すこともできる、とても明るく開放的なデザインの通路になっています。

遠くまで視界が抜けるこの開放感は、ここを通るという日常の何気ない一瞬に、たのしさや街への愛着を与えてくれる。

ガラス張りの通路からは遠くまでよく見渡せて、これから鉄道で出かけるという時や自分の街に帰ってきた時など、移動時間の気分を盛り上げてくれたりします。

通路から見えるホームの屋根には石が敷いてあり、線路敷きの砂利と重なって地面のように見えるように景観に配慮されています。

ホームへと降りるたびにこの都市のスケールを再認識させてくれる。ドイツやオランダでは良く見る駅空間のデザインですが日本ではほとんど見かけない。

ドイツでは屋根を緑化したり太陽光発電に利用することがほとんどですが、ホームの屋根に線路と同系色の素材を選んで敷くという何気ない都市デザインを垣間見た瞬間でした。


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2013/06/03

いまも市民生活の中心!オランダデルフト旧市街の運河を行く水上バス

オランダの運河は歴史的に治水、防衛とライフラインなどの役割を担ってきました。水位は適正に管理されていて多くは今日も輸送などの目的で利用されています。

デルフトでも運河は水上タクシーや自家用ボートで移動したり、多くの場所にかかる橋や建物などの歴史的な建造物とともに美しい都市空間をつくり出しています。

美しい運河を静かに水上バスがやってきました。この場所には橋の上を除いて運河沿いに柵などは無く、時代を超えて都市景観を大切にしていることが感じられる。

旧教会のすぐ隣に小さくてとても美しい運河があります。建物、樹木と運河以外にはほとんど何もない都市景観が保たれていて、市民が歴史的な景観を本当に大切にしていることが伝わってきます。ここはとても狭いので船は通らないと思っていたら、なんと来ました!運転技術すごいです。

狭い運河を進む水上バス、とてもたのしそう!オランダの各都市を訪れた際は水上から街を感じてみるのがおすすめです。

オランダやドイツでは、このような都市空間がその都市のどこか一部にだけあるのではなく、広い面で実際に現在も市民によって利用されていて、適切に維持管理されています。

日本では政策上景観保護が徹底されていないので、保護されてもとても狭いポイント的な景観保護になり、古都の連続性は全く残りません。日本では感じられない古都の感覚がオランダやドイツにはあります。


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2013/05/28

世界中の都市で走る標準形低床トラム!広島トラム5000形グリーンムーバーと芝生軌道

トラムは都市にとって水平移動エレベーターと言えるとても良い要素で、ドイツやオランダをはじめ欧州の各都市では無くてはならない存在となっています。トラム網が衰退した都市でも、その有用性が再認識され路線延長や新規路線の建設も多く行われています。

都市のインフラとしてトラムを推進する都市では、シンプルで機能的なデザインの車両、停留所、芝生軌道などが整備され、巧みな運賃システム、優先信号機を多様するなど、総合的なトラムシステムへの改良が積極的に行われていて、ますます利用しやすくなっています。

宮島方面へ向けて発車するコンビーノ5000形グリーンムーバー。グリーンを基調としたコンビーノが周囲の木々と共に、都市のクリーンな公共交通を感じさせてくれる。世界の低床トラム車体デザインの中でもトップクラスのデザインのひとつだと言えると思います。1999~2002年に導入された車両ですが、時を経てもなお最新車両としての存在感は変わらない。

広島トラムを運営する広島電鉄では、ドイツやオランダのトラムシステムには及ばないものの、日本の中ではとても積極的に改良が進められているトラムのひとつで、平和記念公園、原爆ドーム付近への芝生軌道の導入もそのひとつです。

グリーンのフレームと大きなガラス、世界標準の車両と芝生の軌道が日本に新しいトラムシステムの到来を予感させてくれる。シンプルな電停空間ですが、ドイツやオランダと比較するともう少し簡素な上屋でもいいと感じてしまいます。

広島港から海岸通付近の軌道も延伸改良や芝生化が行われています。また、大きいのもでは西広島や横川付近の改良も行われその場所での利便性は向上しています。

今後も停留所の改良、芝生軌道や連接低床車を増やす計画があるそうですから、とてもたのしみなところですが、日本の場合上下分離方式が完全ではなく、民営化とは少し違う、私鉄が多い日本ならではの問題点から整備の速度は非常に遅いと言わざるを得ません。

そのため、特に車両面では新型車両を一度にまとめて導入できないため、車両の種類や色が増えすぎてコストが上がり、利用者から見ると分かりにくくなってしまう傾向があります。電車ファンにとってはいろいろな車両を見られてとてもたのしいという反面、普段利用しない人、特に観光客にとっては車両のデザインが違うことによって車内の段差、座席の位置、路線や行き先が難解になってしまうなどの問題が発生してしまい、ドイツやオランダと比較するとあまり好ましくありません。

本来はドイツシーメンス社製コンビーノ5000形グリーンムーバー5車体連接車の編成数をもう少し増やし、せめて2号線の車種統一などが出来ればなお良かったとは思います。

このようなシンプルな車両はまさに新しいトラムシステムと言うのにふさわしくうれしいのですが、日本の他都市を見ても、ドイツやオランダのように運行車両の多数を占めるまでには、気の遠くなる時間がかかりそうです。

シーメンス社コンビーノ5000形グリーンムーバーどうしのすれ違い風景。次々と車窓に見える、ひとつひとつの電停空間に少々コストをかけすぎた感じは否めませんが、ドイツやオランダのトラムシステムを思わせる都市空間。コックピットのボタン類はシンプルにまとめられ、モダンな空間は後継の5100形、1000形にも引き継がれている。
元京都市電の1900形がやってきました。歴史的な旧型車両から最新式の低床車両まで、様々な年代の車両が次々とやってくる広島トラムは見ているだけでもとてもたのしい。

ドイツからやってきたコンビーノ5000形グリーンムーバー5車体連接車の後登場した、日本製の5100形グリーンムーバーマックス5車体連接車、2013年から運行開始した、広島トラムのラインカラーとも言えるグリーンではない1000型と共に今日も芝生軌道を快走していることでしょう。広島に行った際はぜひヨーロッパデザインの5000形グリーンムーバーも体感してみることをおすすめします。

2013/05/10

有機的な制御で待ち時間が少ない!オランダの方向別に設置されている信号機

オランダやドイツの多くの都市では、交差点にそれぞれ方向別のレーンが設置されていることがほとんどで、信号機もレーンの機能を最大限発揮できるように方向別に設置されています。

また、信号機は自動車用と歩行者用だけではなくトラム、バスレーンや自転車レーン専用の信号機もそれぞれ方向別に設置されています。

写真はアムステルダムのフォンデル公園正門前の自転車レーンです、自転車レーンにはスタドハウダースカーデを直進する左側の信号機、ミュージアム広場方面に向かう右側の信号機の2台の自転車用信号機があります。

交差点では自転車レーンも直進と右折の分岐となっていて、バスと同じミュージアム広場方面自転車レーンへの自転車用信号機は青になっています。写真は直進する自転車が左側の赤信号待ちをしているところ。

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この交差点は多くのトラム、バスや自家用車が交差するとても交通量の多い交差点で、公園利用者などの歩行者や自転車も多いのですが、それぞれの方向に別々のレーンと信号機があることで比較的スムースな通行が保てれています。

特にオランダでは自転車レーンと歩道の空間も完全に分けられているので、歩道上で自転車が歩行者と交錯することもありません。

また、オランダやドイツでは、多くの信号機に歩行者と自転車用の押しボタンがあり、不必要な青信号はなるべく少なくなるようになっています。そのかわりボタンを押すと比較的すぐ青信号になる場合も多く、特にトラムやバスの信号待ち時間はとても少なくなるようになっています。

押しボタンやセンサーなどによって有機的に信号が変わり、交通状況にあった制御を行っている交差点がとても多く、公共交通や歩行者、自転車が利用しやすい環境が整備されています。


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交通量の多い道路を広げるには建物の建て替えも必要になります。立体交差や実用性に乏しい歩道橋などを作れば都市を維持コストが増大し、歴史的な都市景観にも影響を及ぼしてしまいます。都市の環境や持続可能性の観点からもあまり好ましいとは思えません。

オランダの信号設備や都市空間の使い方は実にコンパクト。限られた都市空間でもデザイン次第で都市はもっと良くなる可能性を秘めていると気づかされます。

日本では多くの都市で新しい道路建設や拡幅事業に関心が偏りがちです。立ち退きや立体交差では整備に時間がかかる上、後世の市民が負担する都市の維持費も増える一方です。

既存の都市空間を部分的に華美にし過ぎるだけではなく、持続的な公共空間とは何か再考してみる必要があると思います。

2013/05/01

乗るのも見るのもたのしい!アムステルダムのダム広場を次々に通るモダンなトラム

アムステルダムのダム広場とモダンなトラム車両の風景を紹介します。

ダム広場は1270年頃にアムステル川をせき止めるダムを設けて街を造りはじめたアムステルダムの歴史の中でも最も重要な場所のひとつで西側には王宮、その北側には新教会があります。アムステルダム旧市街の中心部に位置していて中央駅からはダムラック通りを歩いて約5分、トラムで約1分の場所にあります。

コンビーノの大きなガラスに写る旧市街の街並みと次々に通る低床トラム!車内から大きな窓越しにアムステルダムの街並みを見るのもとってもたのしい。

歴史的なダム広場にもトラムの路線が乗り入れています、ダム広場停留所を経由するトラム路線は全部で11路線でアムステルダム市営交通会社GVBが運行するドイツシーメンス社デザインの5車体連接コンビーノの車両が途切れることなく運行されています。

アムステルダム旧市街の景観にモダンなデザインの低床トラム車両がよく合います!

まるで車両がタイムスリップしてしまったかのような光景!ダム広場の王宮前にはトラムがひっきりなしに走っています、でも自家用車の乗り入れは制限されていているのでトラムに気をつければゆったりと散策することができます、旧市街に響く新しいトラム車両の電気モーター音がなんだか不思議な感じでこれまたたのしい!

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アムステルダムを訪れたらトラムを乗り継ぎながら移動して、中央駅からダム広場などの歴史的な旧市街地区、運河をいくつも越えて芝生軌道を走り郊外を訪れたり、トラムを利用していろいろな場所を訪れるのがすごくおすすめです!

ヨーロッパのトラムやバスは専用の走行空間や優先信号機が確保されていることがほとんどで、運行スピードも速く移動の定時性が確保されています。

特に低床のトラムは道路からそのまま乗車することができるなどの利便性や、地下鉄などと比べると建設時、運用時の設備も小さく環境や都市の維持費などのことを考えると、とっても持続可能性を感じさせてくれる新しい交通システムです。

2013/04/26

内容も取付け方法もシンプル!ミュンヘン公共交通MVGのLCD運行案内のデザイン

ミュンヘン中央駅からUバーン(U2)で約20分、もともと空港があったところを再開発したミュンヘンリーム地区にあるメッセシュタットオスト駅に到着します。ミュンヘンのUバーンの新しい車両の居住性はものすごく良く移動がたのしい!車両はまたの機会に。

駅の東側からメッセ方向に出たところにあるLCD案内装置。ミュンヘンMVGではこのデザインのLCD案内装置がいろいろな駅に設置されています。

メッセシュタットオスト駅は構造体のコンクリート打ち放し仕上げや自然光が心地よいトップライトを非常に多く取り入れていて重厚でとても明るいデザインの駅空間になっています、地下のUバーン以外に地上には路線バスも発着しています。

メッセ側の駅出入口の天井にちょこんとボルトで取り付けられているLCD案内装置。スチールの取り付け部材と配線のパイプがいかにも後付ですが、最低限の造作感がむしろこの空間の持つ魅力とマッチしていて心地よいデザイン。
鉄道とバスの案内が1枚のLCD案内装置に表示されています。巧みにデザインされた公共交通のネットワークがここにはあるということが感じられる。MVGカラーの背景と路線カラー、最低限の白文字の情報がLCDの中に納まっているという魅力。どこにも過剰な案内表示や広告は見当たりません!


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比較的新しいこの駅は、駅全体が非常に質が高く設計の随所に自然光や自然換気など自然環境への配慮が感じられます、ドイツらしい土地を読み取った必要最低限の開発、採用されている部材の種類などに持続可能性がとてもよく感じられる設計です。

メッセシュタットオスト駅に関連する投稿
駅の豊かな表情となっているガラス屋根!ミュンヘンUバーンのメッセシュタットオスト駅

2013/04/19

緑のカーペットを軽快に走る低床トラム!アムステルダムチャーチル大通りの芝生軌道

アムステルダム中央駅からトラム25番線に揺られて約20分、ヘンドリク・ペトルス・ベルラーヘが都市設計を手がけたアムステルダムサウス地区にさしかかります。

サウス地区内のトラム25番線が通るチャーチル大通りには中央にとても広い芝生空間があります、大通公園的なゆったりとした通り空間になっています。そして芝生空間に寄り添うように上下線トラム専用の芝生軌道が走り車線とは別に自転車レーン空間もしっかり確保されています。

トラムは住宅に囲まれた緑地の中を静かにとってもスムースに走行しています!

洗練されたグリーンカーペットの都市空間を軽快に走るトラムの姿は、この都市がいかに環境を整え、市民に愛され、暮らしやすいかを感じさせてくれます!中心市街地にあるほとんど何も無い芝生空間とトラムにはそれほどの強いインパクトがあります。
中央の芝生空間を挟んで左右にそれぞれ芝生軌道、車線、自転車レーン、駐車帯と歩道が整備されています。左の奥には反対方向のトラムの姿が見えます。

サウス地区にある大通りはアムステラーンとも呼ばれ1920年代からの時を経て現在もアムステルダムの歴史的に重要な地区になっています。歴史的な街路空間とモダンな低床トラムの車両がアムステルダムの都市の深さを感じさせてくれます。

ガイドブック片手にベルラーヘの都市への見解を感じながらアムステルダムサウス地区を訪れてみるのがとてもおすすめです。


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2013/03/27

オランダの自転車専用レーンは続くよどこまでも!アムステルダム近郊のランツメール地区を快走

良い天気!自転車に乗ってアムステルダム中央駅の北側の発着場からGVBのフェリーで運河を渡って走ること約30分でランツメール地区を南北に通るノールトアインデ通りにさしかかります。

ノールトアインデ通りは歴史的な郊外の街中を走る旧道といった雰囲気で道路に沿って緑豊かな住宅が立ち並んでいます。アムステルダムとプルメルエント方面を結ぶ道路ですが東西に合わせて2本のバイパス的な幹線道路がきちんとあるため広域的な通過交通は少なめです。

通りは対面通行ですが道幅はとても狭くクルマがやっとすれ違える程しかありません。でもそこはやっぱりオランダです!ここにもちゃんと自転車の走行レーンが上下線ともきちんとデザインされています。

歩道は石畳、自転車レーンは赤色の舗装材と白い点線によって明確に確保されています!クルマは対面通行時には自転車レーン側にはみ出して通行します。なので自転車とクルマの通行が双方向で重なった時クルマは自転車の後ろを付いて走行して対向車をやり過ごします。



景観の保全された街並みがどこまでも続いています。どこまで行っても歩道と自転車レーンの空間はきちんと確保されています。クルマはすれ違うときに自転車レーンを使わせてもらうといった感じです。

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こんな道幅の狭いノールトアインデ通りには路線バスも運行されていて大型のバスはすれ違いでなくても結構ぎりぎりです。でも自転車レーンをきちんと走っているとバスやクルマ同士でうまく譲り合ってくれます。また、ノールトアインデ通りに沿ってオランダではおなじみの水路がある場所があります。ここもとってもとっても美しい!素晴らしい景観です。さらに進み段差も無く快走しているとなんだか違和感。そういえば通りに沿って水路はあってもガードレールがありません。こんなオランダの都市デザインがとっても心地良いです。

バスが通るとぎりぎりの道幅をますます実感できます!自転車が居るとバスもクルマもスピードを落としてくれます。左側の水路がとってもきれいでガードレールも無く景観は良好です。
この先に自転車レーンルートのポイントがあるというサイン!決してレトロ調などという安易なデザインを導入せず標準的なものを設置してあるところが良いと思います。

上空に送電線のない広い空!大切にされてきた場所をむやみに道路を拡幅したりして変えたりしない、そして限られた都市空間をシェアするという考え方と実際に成り立っているという素晴らしさ。オランダのこんな都市デザイン政策うらやましい限りです。

オランダの各都市にはこのような自転車専用レーンが広域で整備されています。自転車で移動することがとっても快適です。アムステルダムを訪れた際は自転車に乗ってマップと標識を頼りに郊外にも足を伸ばしてみるのもおすすめです!

2013/03/10

オランダの渡りやすい横断歩道デザイン アムステルダムサルファティ公園東側の横断歩道

オランダの横断歩道は渡りやすい!何でだろう?!オランダに限らず欧州の国々では当たり前といってもいい横断歩道の都市デザインがあったのです。

アムステルダム中心市街地のハイネケンエクスペリエンスから南へ10分も歩くとサルファティ公園に差し掛かります、都心の中でも本当に緑の多いアムステルダムの街路は歩いていてとっても気持ちがいいです。公園の東側、トラムの3、25番線が通るセインテウールバーンを渡る横断歩道を例に見てみます。

お孫さん?の手を引いて道路空間の真ん中にある交通島で東方面のトラムと車道の様子を伺いながら渡るタイミングを見計らっている様子!この時点で西方面の自転車レーン、車道とトラムは渡り終えているのであと半分で道路を横断できる。

一見狭そうに見えるこの道路は歩道のほかに自転車レーン(赤い舗装の部分)、車道とトラムが相互に走っているため結構広い幅員と交通量があります、その道路空間の中でグレーの四角い舗装材が使用されている空間が歩行者のための空間です。最初は道路の真ん中で待つなんて危ないと思ったのですが、実はたくさんのメリットもある道路空間でした。

写真手前の歩道から渡り始めると始めは西方面の自転車レーンを渡ります、そして交通島。次は西方面の車道とトラムを渡ります。そしてこの時点で半分、真ん中の交通島に着きます。あとは東方面のトラム、車道を渡り、そして交通島。最後に東方面の自転車レーンを渡れば横断完了です!このように交通島がいくつもあるのでひとつひとつ確かめながらまるで飛び石のように渡れる横断歩道デザインというわけです。

たくさんの要素のある道路を一度に全ての状況を確かめて渡るのはとっても大変で、横断歩道のペイントのみでは止まってくれる自動車も非常に少なくお互いにタイミングを間違えやすくなりますし、渡るチャンスは全てのタイミングが合った一瞬しかありません。このような交通島のある横断歩道デザインの方が個別に対応できてより早く、安全に横断できる可能性が高くなると思います。

さらに、多くの場合写真のように交通島が複数あることで狭さくの役割を果たしますし、車道にはハンプもあるので歩行者が居るときには自動車はスピードを落としやすいデザインとなっていて必ずしも信号機が必要ではない横断歩道空間を造ることもできます。つまり都市の維持、管理コストや無駄なアイドリングも削減することが可能となります。

そんな交通島と横断歩道の都市デザインの様子をグーグルマップを利用して見てみましょう。ここは都心?!しかし本当に街路樹や公園の緑とカフェがとってもきれいです。


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©Google

このような横断歩道のデザインもあってかオランダやドイツでは横断歩道や交通島に歩行者が居るときは結構な確立で止まってくれます。きっとドライバーも交通島に歩行者が居たら渡ってきそうで怖いので止まるか、スピードを落とそうと考え歩行者優先の行動がしやすいのだと思います。歩行者に優しい良い都市デザインですね!是非実際に現地で体感してみてください!

ちなみに日本の市街地で考えてみるとこの幅員があればだいたいの場合片側2車線(4車線)の道路となり、交通島も無いので信号機なしで渡るのはちょっと怖いですね。

2013/02/24

ここは余暇を過ごす街?!アムステル駅前に広がる水辺の道路空間デザイン


何気なく歩いていると、ここは余暇を過ごす街?!ヨーロッパの都市ではこのように感じることが多々あります。

アムステルダム南東部の東地区にあるアムステル駅はオランダ鉄道、アムステルダム市営交通メトロ3路線、駅前からはトラム12番線と10本以上のバス路線が頻繁に発着する大きな駅です。アムステル駅の西側のオフィスや住宅間を少し歩くとそこにはアムステル川が流れています。

川側の歩道はダスト舗装のような仕上げになっています。ベンチやごみ箱、街灯などのストリートファニチャ以外はまるで手つかずの自然のままのような都市空間が広がっています。駐車帯と歩道の間の赤い部分は自転車専用レーン!自転車専用レーンも上下線が完全に分かれて整備されているので自転車同士も安全ですし、何よりオランダでは歩道には自転車は来ませんからベビーカーを押しながらでも安心してゆっくり歩くことができます!

川沿いに通るウェースペルザイデ通りはメーステル・トルーブラーン通りからアムステル駅西側の駅前地区に北側からアクセスする道路でクルマは多いものの反対の地区へは歩行者と自転車のみが通過できる都市デザインとなっているためクルマがスピードを上げて通行することはありません。

日本ではこのような街区内の道路にも車線を設けて他の街区に通過できる構造としてしまうために頻繁に通過交通が流れ込み常にクルマの走行音や自動車事故の起きる可能性が高くなることが多々あります。

ウェールペルザイデ通りの幅員はとても広く、自家用車向けの空間を最小限にしているため道路というより広場や公園といった感じさえします。

ガードパイプは無く歩道、自転車専用レーンと車道が最小限の部材でデザインされています。車道にはラインは無いですが駐車帯とドアの開閉などのための降車スペースもしかっり確保!片側2車線よりも自家用車のユーザーにはこのデザインのほうが実用的な空間といえます。交差点部分の車道はハンプ形式で盛り上がり歩道、自転車道と同じ高さ、仕上げになっていて歩行者や自転車が優先されていることが良くわかります。左側は川ですが欄干は無く芝生、樹木と川というシンプルな構成で都市の中心部とは思えない景観が目の前に広がっています!

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さてさて、ヨーロッパの都市や建築の事例を目の当たりにするたびに思うことがあります…

もし日本で駅前の川沿いにこのような幅員の道路空間があったら。きっと片側2車線で1車線は駐車車両がたくさん、車道は交通量が多くガードレール両側に設置されます。また、自転車専用レーンはなく歩道で歩行者との危険な混在が起きます。さらにこれほど幅員が広いと予算をつけて何かのオブジェを置いたり、過剰な装飾付の欄干やタイルで過剰な模様舗装などなどするだろうと思い出し都市デザインのあまりの違いにがっかりします。

おそらく日本によくある路線ごとにデザインされすぎの道路より、オランダの面的にデザインされた都市の方が整備費用と維持費用は低く抑えられ、実用性はより高く良い空間となっていると思わざるを得ません!まさに持続可能な都市といった感じがします。

ヨーロッパの各都市、その中でもオランダには最小限と感じる都市空間はとても多く、どれも良いし!楽しいし!と感じます、都市デザインの違いに日本がオランダから学ぶことは非常に多いと思います。決して華美にするのではなく今ある都市をより良い空間に更新し続けるという都市デザインを日本も考えなくてはいけないと思います。新しく密度の低い都市を郊外に広げるより、昔からのコンパクトな都市を愛着を持って維持管理しながら使い続けるということを日本人は忘れてしまったのでしょうか。

日本には日本の良いところもたくさんあるとは思いますが、海外の事例などの現実にももっと目を向けて、地球の一員として人の都市は今後どうあるべきか柔軟に考えるほうがいいと思います。例えばインフラを最小限に、造ったら終わりではなく後世が維持するのに環境負荷や多額の税金がかかることを忘れずに都市を設計しなくてはいけないと思います。現に今現在オランダの都市デザインはこの事例のような空間が都市全体に面で出来ていますし、今この時も建築都市設計オフィス、役所の都市デザインオフィスや多数のコンペ開催などを通じて革新を続けていることでしょう。

2013/02/07

街に黄緑の空間!ベルシュカ渋谷のファサードデザイン

スペインを本拠地に世界でファッションブランドZARAを展開するインディテックスグループ。同社のカジュアルファッションブランドBershka(ベルシュカ)渋谷が2011年4月にゼロゲートビルにオープンしました。

印象的なゼロゲートビルのファサード階段フレームはベルシュカオープンに合わせて明るい黄緑色へと変更されました。白の抜き文字のロゴと共に、ベルシュカのブランドイメージとも合ったデザインの建物が渋谷の街に浮かび上がります。

井の頭通り沿いのファサードデザイン。黄緑色のフレームとガラス越しに見える各フロアーが日本の同規模のビルではあまり見られない外と内の空間のつながりを街に演出しています。夜の街に浮かび上がる黄緑の空間とロゴは渋谷の元気なイメージとも合う。

店舗は1階~4階に出店、主に登りのエスカレーターで上がり、下りはファサードに面した明るい黄緑色の空間の中にある階段を利用して降りてくる設計で、日本の同規模の建築にはあまり見られない空間デザインを体験をすることができます。

ガラス側の床面には照明が設置され、外から見たときに光源が目に入らないようになっています。ガラス側は天井を介した照明になっているため外と内の程よい繋がりを感じられる空間になっている。
消火栓などの設備も黄緑の空間に組み込まれています。

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2013/01/04

ミュンヘン郊外の景観に溶け込むラウンドアバウトのデザイン

ドイツミュンヘン郊外、都心から東へクルマで20分程走るとそこにはのどかな田園風景が広がっています、ここはミュンヒナー通りプッツブルンの街近くにあるラウンドアバウトです。

ラウンドアバウトは通常3本以上の道路を円形の道路を介して接続したもので、車両は環状の道路を一方通行で通行して目的の道路に進む交差点です。環状の道路を走る車両が優先でラウンドアバウトに進入する車両が譲れの規制で制御されています。標識は一時停止ではなく三角の譲れの標識が設置されています。

ミュンヒナー通りは、プッツブルンの旧市街を通る旧道と旧市街を迂回するS12079通りがこのラウンドアバウトで分岐しています。ここの交通量は結構多く、とても大きなラウンドアバウトになっています。自然の景観や地形の中に車道、歩道と街灯、標識だけがある感じで、必要最低限な都市デザインを感じられます。
ラウンドアバウト手前にある案内標識もラウンドアバウト仕様になっています。ラウンドアバウトがこの街の都市デザインに標準的に取り入れられていることが感じられる。

ところで、ラウンドアバウトは日本ではほとんど見かけないし、とても危なそうなイメージがあります。しかし、ドイツやオランダに行くと本当にたくさんのラウンドアバウトが整備されています。

車両はラウンドアバウトのルールを守っていればとても安全ですし、多くの場合交通島などは美しく緑化、維持管理されていています。また、交差点に信号機を設置しなくても良いので電力もメンテナンス費用もかかりませんし、何よりどうしてもできてしまう不要な赤信号によるアイドリングも減らすことができます。

交通量の問題もありますが、都心部の結構交通量の多い交差点でもラウンドアバウトになっていたり、ラウンドアバウトの一部に信号機を併設したりするなどの柔軟な運用のラウンドアバウトも見かけることがあります。

日本では郊外でも見かけないラウンドアバウトですが、ようやくその利点を再考する動きも見られます。軽井沢町などの一部の都市では試験的に導入したり飯田市のように本格的な導入に踏み切る都市も出てきました。

ラウンドアバウトは、都市の維持費削減や再配分、そして何より都市環境を良くするためにはとても良い都市デザインのひとつです。


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